老眼鏡が不要に?米国で承認された老眼改善目薬『Vuity』をご紹介

コラム

老眼には老眼鏡を使うしかないと思っていませんか?実は2021年10月に、米国で世界初となる老眼改善の目薬が承認され、大変話題になっています。
日本ではまだ承認されていないのですが、今回は老眼鏡が不要になるという噂の目薬『Vuity』について解説します!

老眼が生じるメカニズム

老眼とは、加齢に伴って近い距離にピントを合わせることが困難になる状態をさします。40歳を過ぎる頃に現れて、その後50~55歳で加速し、60歳を過ぎる頃まで進行するといわれています。
老眼が生じる原因として、以下の3つがあげられます。

水晶体の弾力低下

カメラのレンズにあたる『水晶体』が、その厚みを柔軟に変化させ、遠くのものから近くのものまで臨機応変にピントを調節しています。ですが、加齢とともに水晶体の弾力は低下し固くなるため、柔軟に厚さを変えてピントを調節することが難しくなってきます。

毛様体筋の衰え

水晶体の厚みを調節しているのが『毛様体筋』と呼ばれる筋肉です。加齢によって毛様体筋が衰えてくると、水晶体を引っ張る・緩めるという力が弱まって、水晶体の厚みをスムーズに変えることが難しくなります。

虹彩の動きが鈍くなる

眼球の色がついている「茶目」の部分を『虹彩』、その真ん中にある「黒目」の部分を『瞳孔』といいます。虹彩はカメラの絞りに相当し、入ってくる光の量を調整しています。加齢と共にその調整機能は低下し、暗くなると見えにくいといった症状が現れます。

老眼改善薬『Vuity』の登場


老眼治療として、人工レンズを入れるといった手術も行われるようになっていますが、それでも依然、手軽な老眼鏡やコンタクトレンズを使って対処しているという方が圧倒的に多いのが現状です。

そんな中、2021年10月、米国で世界初となる老眼改善の目薬『Vuity』が承認されました。『Vuity』の主成分はピロカルピンと呼ばれるもので、ピロカルピン自体は新規開発された薬剤というわけではありません。日本でも緑内障などの治療薬として1967年から使用されてきた成分です。

40~55歳の成人男女750人を対象とした臨床試験では、1日1回の点眼で、15分後あたりから効果が現れ、その後約6時間、老眼改善効果が持続したということです。
近くは見やすくなったけれど遠くが見にくくなったというのであれば問題ですが、遠距離の視力に対しマイナスの影響はなかったとのことです。副作用は頭痛と目の充血程度で、こちらも大きな問題はなかったと報告されています。

作用機序は、瞳孔を収縮させることによって、近距離のピントが合わせやすくなるというものです。ただ、ピントが合って読みやすくなる一方で、瞳孔が小さくなって目に入る光の量が減少するため、暗いところでの視力は低下してしまいます。夜間の運転などは特に注意が必要です。

気になる値段ですが、30日分でおよそ80ドル。残念ながら、使い続けるにはまだちょっとハードルが高いようです。

日本で承認の可能性


『Vuity』は、日本ではまだ承認されていないので、処方を受けることも、薬局で購入することもできません。
ですが、即効性が高く1日1回の点眼で済むことからも、日本での承認を期待する声も多いようです。
ただ、高齢者に対する有効性・安全性の研究データは十分ではなく、また、頭痛や充血などの副作用もあります。日本での承認を得るには、有効性・安全性に関するデータのさらなる蓄積が必要といえるでしょう。

まとめ


『Vuity』は老眼を完全に治す目薬ではありません。ですが、老眼治療の1つのオプションとして、日本でも選択できる日が早く来るとよいですね。

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