心の不調と鉄不足の関係

コラム


2017~2019年の健診データを用いた健康ビッグデータ解析から、鉄不足が心の不調の要因となる可能性が示唆されています。
女性に多いとされる鉄不足ですが、鉄は私たちの体の中で実に様々な役割を担っています。今回は鉄と心の不調の関係にフォーカスしてお話します。

女性に多い鉄不足・貧血

女性に多いと言われる鉄不足や貧血。なぜ女性に多いのか、その理由から見ていきましょう。

鉄は人体に必要なミネラル成分で、主に赤血球のヘモグロビンに存在します。赤血球のヘモグロビンは、酸素を体のすみずみに運搬するという重要な働きをしており、そのヘモグロビンの生成に欠かせないのが鉄です。鉄が不足すると、赤血球・ヘモグロビンの数が減ってしまい、全身が酸素不足の状態となります。

赤血球の寿命はおよそ120日と言われており、毎日2,000億個近くの赤血球が新たに作られています。
通常、赤血球の鉄はリサイクルによって維持されるのですが、女性の場合は、毎月の月経(出血)によって、維持されるはずの鉄が減り続けることになります。そして、食事などで鉄の供給が追いつかなければ、鉄不足・貧血につながってしまうのです。

特に月経が重い(出血が多い)女性は注意が必要で、また、月経以外に妊娠や授乳も女性が鉄を多量に失う機会となってしまいます。

さらに、女性は男性に比べて動物性蛋白の摂取量が少なく、その点も女性の鉄不足のリスクが高まる要因となっています。

鉄不足が引き起こす心の不調

ではここから、心の不調と鉄不足の関係についてお話します。
精神面を左右する代表的な神経伝達物質として、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニン、快楽感を生むドーパミン、やる気を促すノルアドレナリンなどがあります。
これらの神経伝達物質の生成には酵素が必要なのですが、その酵素を助ける働きをしているのが鉄なのです。そのため鉄が不足すると、これらの神経伝達物質も不足し、その結果うつやパニック障害などの症状を引き起こすことにつながります。

鉄不足による心の不調には以下のような症状があります。
● イライラしやすい
● 急に不安になる
● 気分が落ち込む
● 集中できずに頭がぼーっとする

鉄不足・貧血を予防する食生活

鉄不足・貧血を予防するためには、食生活を改善することが重要です。
鉄には、主に肉や魚に含まれるヘム鉄と、野菜や卵などに含まれる非ヘム鉄があります。

ヘム鉄は非ヘム鉄に比べて吸収率が高く、ヘム鉄を十分にとることで非ヘム鉄の吸収もよくなります。また動物性蛋白やビタミンCを一緒に摂ることで吸収しやすくなるとも言われています。

以下、鉄分を多く含む食品です。参考にしてみてください。

ヘム鉄
● 牛レバー・豚レバー・鶏レバー
● 牛肉
● カツオ・マグロなどの赤身の魚
● めざし

非ヘム鉄
● 豆乳、・納豆・豆腐などの大豆食品
● そら豆・レンズ豆などの豆類
● 小松菜・春菊・ホウレンソウなどの緑黄色野菜
● ひじきなど海藻類

また、鉄は胃酸が分泌されている状態で吸収率が高まります。柑橘類や酢など酸っぱいものを摂取したり、普段からしっかりよく噛んで食べることで胃酸の分泌を高めるよう心がけましょう。

月経がある女性の鉄の1日摂取推奨量は10.5〜11.0mgとされています。この必要量を毎日3回、バランスのよい食事で摂ることが望ましいですが、食事だけで鉄分を補えない場合は、 サプリメントを活用するのもよいでしょう。
また、普段使っている調理器具を鉄鍋に変えるだけでも、鉄分を効率的に摂ることができます。

まとめ

女性にとって身近な鉄不足・貧血。心の不調を感じている人は、ひょっとしたら鉄不足が原因になっているのかもしれません。
鉄不足によるリスク(うつ・パニック障害など)について認識し、予防のための食生活を心がけてみませんか?

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