「ナルコレプシー」とは?症状・原因・治療について知ろう

コラム

重要な仕事の会議や試験中など、大切な場面であるにも関わらず強烈な眠気を感じて寝てしまう、そんな症状を有するのが「ナルコレプシー」という疾患です。偏見や誤解に苦しむことの多い疾患で、周りの人たちの理解と思いやりが求められています。

ナルコレプシーと主な症状

ナルコレプシーは、時間や場所に関わらず、突然強い眠気に襲われ、1日に何回も睡眠発作が起こるという疾患です。思春期に発症することが多く、日本人のナルコレプシー罹患率は世界で最も高く、およそ600人に1人とみられています。

ナルコレプシーの主な症状は以下の4つです。

● 日中の睡眠発作
重要な仕事の会議や試験中など、普通であれば、緊張・興奮などで眠れるはずがないような時でも、強烈な眠気が起こって眠ってしまいます。眠気すら感じないうちに眠ってしまう場合もあります。

● 情動脱力発作
喜怒哀楽といった情動が強くおこったときに、全身の力が抜けてしまう状態を「情動脱力発作」と言います。うまく舌がまわらない、ひざの力が抜ける、立っていられなくて倒れるなどの症状が見られます。

● 入眠時幻覚
寝入りばなに、幻覚と思われるような非常に鮮明な夢を見るというのが入眠時幻覚です。ナルコレプシーでは、寝入るとすぐにレム睡眠に入ってしまうことがあります。通常のレム睡眠とは異なり、体は眠っているにも関わらず脳がまだ覚醒しているために、非常に鮮明な夢を見ることになります。

● 睡眠麻痺
睡眠麻痺は、前述の入眠時幻覚にしばしば一致して生じます。寝入りばな、脳はまだ覚醒しているのに、筋肉が完全に脱力状態になるため、体が動かない、声が出ない、いわゆる金縛りのような状態が発生します。

ナルコレプシーの原因

ナルコレプシーの原因として、興奮の伝達・抑制を左右する脳内物質の一種、オレキシンの不足が関与している可能性が高いことが指摘されています。

睡眠には「ノンレム睡眠」「レム睡眠」「覚醒」の3つの状態があり、オレキシンは脳を「覚醒」させる役目を担っています。そのオレキシンが不足することで、睡眠と覚醒を切り替える脳の機能が不安定になるのだと考えられています。

ナルコレプシーの治療

症状が軽度の場合には、24時間の睡眠・覚醒状況を記録し、自分の睡眠パターンを理解することから始めます。そして、規則正しい生活を心がける、短時間の仮眠を取り入れる、カフェインを適宜摂取するといった生活指導が行われます。

症状が中度〜高度の場合には、薬物療法が行われます。夜間の熟眠障害には睡眠薬、日中の眠気には脳の機能を活発化させる中枢刺激薬が処方されます。中枢刺激薬を用いることで日中の眠気を抑えることができます。

ナルコレプシーと学業・仕事

ナルコレプシーでは、重要な仕事の会議中や試験中などに睡眠発作が起こるため、学業成績の不振・職業上の失敗などさまざまな社会的不適応を招くことにつながります。

一般企業で働く場合には、産業医や上司、同僚などにナルコレプシーの症状を説明し、仕事を進めやすい環境の作り方について相談することが大切です。
また、仮眠を取ると突発的な睡眠発作を抑えることが可能になるので、例えば昼休憩の時間帯や午後の勤務中に短い仮眠を取れるように調整することなども、考慮するとよいでしょう。

まとめ

ナルコレプシーは日中に強烈な眠気が生じて眠ってしまう疾患です。日本人の罹患率は世界で最も高いと言われているにも関わらず、依然「居眠り病」と呼ばれることもあるなど、理解が進んでいません。

「なまけている」わけでも「緊張感が足りない」わけでもない、そんな疾患に対する理解と思いやりが求められています。

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