レントゲンの撮りすぎは危険?放射線検査と被ばくリスクについて

コラム


健康診断では、胸部レントゲン検査、胃のバリウム検査、乳房マンモグラフィーなどの放射線検査が行われますが、その際の放射線被ばくを心配する声をよく耳にします。今回は、レントゲンの撮りすぎは本当に危険なのか、放射線検査の被ばくリスクについてお話しします。

放射線被ばくのメカニズム

放射線検査ではX線を使用するため放射線被ばくを伴うことになります。まずは放射線被ばくのメカニズムからお話しします。

細胞の中にはその設計図となるDNAがあるのですが、放射線にさらされるとDNAの損傷が起こります。放射線による身体影響のおもな原因はこのDNAの損傷にあります。

損傷の程度は線量の増加に比例して大きくなりますが、DNAには損傷を修復する能力が備わっており、低線量被ばくでダメージが小さい場合は、通常ほぼ完全に修復されます。
一方、ダメージが大きい場合には、損傷が元通りに修復されなかったり、間違った修復が行われ、遺伝子情報が変化してしまいます。その結果、染色体異常が誘発され、がんや白血病(血液のがん)を引き起こす原因となってしまうのです。

ですが、極端に短い期間内に繰り返して検査を受けない限り、DNAの傷害が残り、後遺症が発生するという可能性は極めて低いとされています。

危険となる被ばく量と実際の被曝量

では、DNAの修復が不可能となるような大量被ばくとは、どの程度なのでしょうか。放射線の被ばく量には、シーベルト(Sv)という単位が用いられています。

放射線被ばくによる身体的影響は、線量の増加に伴ってリスクが上昇するのですが、100ミリシーベルト(mSv)を超えて初めて影響が出ると言われています。現在、100mSv以下の線量でのリスク上昇は実証されていません。

では、実際の放射線検査時の被ばく量はどの程度なのでしょうか。
およその被ばく量(1回ごと)は以下のとおりです。

● 胸部:0.05 mSv
● 乳房(マンモグラフィー):0.14 mSv
● 胸部CT:5 mSv
● 肺ドック(健診):0.5 mSv
● 胃(バリウム):4 mSv

どの検査も、一度に何回も繰り返して行わない限り、100mSvを超えることはありえない線量です。

そして、そもそも私たちは、自然界からの放射線を日々浴び続けています。宇宙から地球には多くの放射線が降り注がれています。空気中には岩石から放出されたラドンといったガスが含まれており、食べ物にもカリウム40と呼ばれる放射性物質が含まれています。

自然放射線の被ばく量は地域によって異なるのですが、日本における自然放射線の被ばく量は1年間で平均2.1mGyと言われています。

放射線検査の正当化と最適化

放射線検査の被ばく量は、身体に影響が出るとされる量よりもはるかに少ない被ばく量なのですが、それでもリスクが全くないというわけではありません。

その一方で、放射線検査には「病気の発見・評価」や「適切な治療方法の選択」を可能にするという大きなベネフィットがあります。

被ばくによるデメリットよりも、検査を受けることで得られるベネフィットが十分に大きいという判断のもとに、必要な場所にのみ必要最小限の放射線検査が行われています。医療現場においては、不必要な検査を控え、それぞれの検査における被ばく線量を最小限にする(最適化)努力がされているのです。

まとめ

放射線被ばくはできる限り抑えることが望ましいですが、喫煙・大量飲酒・食生活・ウィルスといった生活環境因子によるがん発生リスクと比較して、放射線検査の被ばくによるリスクは非常に小さいのです。
「病気の発見・評価」や「適切な治療方法の選択」を可能にする放射線検査の意義は非常に大きく、むやみに避けるべきものではないと言えそうです。

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