がん検診は何歳まで受けるべきか?判断基準にすべきものとは?

コラム

がん検診は、利益と害のバランスを考慮して推奨年齢が定められています。ですが、日本では推奨年齢の上限は定められておらず、高齢になっても受け続けた方がいいという誤解にもつながっています。がん検診は何歳まで受けるべきなのか、その目安と判断要素について解説します。

がん検診についての考え方

がん検診の目的は、健康な人(無症状の人)の中から、がんを早期に発見して適切な治療につなげ、がんによる死亡率を減らすことです。
乳がん・子宮頚がん・大腸がん・胃がん・肺がんの5つは検診の有効性が認められており、厚生労働省はこれら5つのがん検診を推奨しています。
ただし、検診を受ける年齢は若いほどよいというわけではなく、若年者におけるがん検診は、がんの死亡率が低いにも関わらず、誤ってがんの可能性が指摘されるというリスクが比較的高くなっています。そういったことを考慮して、自治体でのがん検診は、対象者の年齢制限が設けられているのです。

がん検診の推奨年齢

がん検診の推奨年齢は、検診による各年齢層の利益と害のバランスを考慮した上で定められていますが、現在のところ日本では、推奨年齢の上限は定められていません。その一方で、ガイドラインなどでがん検診の推奨年齢の上限を定めている国も多々あります。
例として、日本とアメリカの推奨年齢を以下に示します。

日本
乳がん:40歳以上
子宮頚がん:20歳以上
大腸がん:40歳以上
胃がん:50歳以上
肺がん:40歳以上

アメリカ
乳がん:40〜64歳
子宮頚がん:21〜64歳
大腸がん:50〜75歳
胃がん:ー
肺がん:ー

日本で推奨年齢の上限が定められていない理由として、高齢者の健康状態は個人差が大きく、一律の線引きは容易ではないことが推測されます。ですが、目安となるものがないため、高齢になっても受け続けた方がいいという誤解につながっているケースや、何歳まで受け続けるとよいのかわからずにとりあえず受け続けているというケースもあるというのが現状です。

がん検診は何歳まで受けるべきか?

がん検診には適正年齢(層)というものがあり、検診の有効性が最も高いのは、がん死亡率がある程度高く、十分な余命もあり、検査や治療に耐え得る体力がある年齢層です。その年齢層より若くても高齢でも、検診の有効性は低下し、検診による利益を害が上回るなどそのバランスが崩れることになります。

アメリカの検診推奨年齢の上限は、「がんが発見されても手術・治療に耐え得る体力がなない」「検診を実施しても死亡率には影響がない」といったデータに基づき決定されています。アメリカの基準であるため、それをそのまま日本人にあてはめることはできないものの、日本では「75歳」を推奨年齢上限の目安としてよいのではないかという声が多いようです。

ですが、ここで大切なことは、たとえば75歳でもバリバリと仕事をしているような人であれば、検診を続けることも選択肢となり得ることです。また、「治療ができない状態であったとしても、がんの有無をはっきり知ったうえで、残りの人生を考えたい」と考える人もいるでしょう。

がん検診を終了する年齢は科学的なエビデンス以上に、それぞれの健康状態や人生との向き合い方といった価値観で、個々人が決定するということが重要なのです。

まとめ

がん検診の推奨年齢の上限として75歳という年齢が1つの目安と考えられますが、それはあくまでも「目安」です。がん検診は何歳まで受けるべきか、それは個々人の健康状態や価値観で判断すべきものと言えます。

そして、納得いく判断をするためには、人生との向き合い方といった価値観を家族で共有しておくことも、非常に重要になってくるのではないかと思います。

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