発症率は? 死亡率は? 日本人と腎臓病の関係

コラム

日本人は腎臓病の発病リスクが高いと言われていますが、いったいどれほどの人数が腎臓病に苦しんでいるのでしょうか。また、治療には何よりも早期発見が大切だと言われていますが、少しでも早く見つけるための検査にはどのようなものがあるのでしょうか。
健康診断で見るべきポイント、そして、それらのポイントで腎臓病の可能性が示唆された場合に行うべき詳細な検査についてご紹介します。

日本人の腎臓病リスクについて


・日本人の中の腎臓病患者
日本腎臓病学会によると、日本人の成人人口の8人に1人が慢性腎臓病であると言います。これは2008年の統計データに基づいていますが、2010年末の透析療法患者は約29万7,000人でした。成人人口8人に1人という割合を計算すると、2008年の人口データからの推計は約1,330万人です。腎臓病は自覚症状が少ないため治療を受けていない患者が多いのですが、推定患者数と受療患者数の落差がそれを証明していると思っていいでしょう。

・腎臓病の種類
主な腎臓病の種類は以下の通りです。
 ・慢性腎炎(慢性糸球体腎炎/CKD)
 :徐々に腎機能が低下する腎臓病で、CKDで失われた腎機能は治療しても回復しません
 ・急性腎炎(AKI)
:急激に腎機能障害が起こる腎臓病で、外傷の関連や尿路結石などの影響で現れることがあります
 ・糖尿病性腎症
:糖尿病の関連疾患として起こる腎臓病です。高血糖によって糸球体の動脈硬化が進んで腎機能障害が起こります
 ・腎硬化症
 :血管障害に関連して起こる腎臓病で、高血圧や動脈硬化症に由来します
 ・多発性のう胞腎
:複数ののう胞が腎臓内に発生して腎機能障害となる腎臓病です。遺伝性の腎疾患なので、生活習慣の品質に関係なく発生する可能性があります
 ・ネフローゼ症候群
:原発性腎疾患、あるいは続発性腎疾患でタンパク質の濾過ができなくなり、尿へのたんぱく質の流出量が増える状態のことです

・腎臓病の死亡リスク
腎臓病の怖さを知るには死亡リスクを把握しておく必要があるでしょう。慢性腎臓病から慢性腎不全に陥った場合、通常の生存期間は数か月程度です。
透析治療を受ければ猶予を引き延ばせますが、長くても5年から10年以内に死亡に至ります。
いかに腎機能を失わないようにするか、それをよく考えてください。

腎臓病の検査

・まずは健康診断で兆候を見つけよう
腎臓の機能がどの程度残されているか見るには、まず血液検査の数値で以下の項目をチェックします。
 ・クレアチニン(Cr)
:筋肉内で作られる代謝物質で、本来ならば腎臓によって濾過されるためほとんど血中に存在しません。クレアチニン量が多ければ多いほど腎臓に深刻な障害が起こっているということです
・推算糸球体ろ過量(eGFR)
:クレアチニン値や個人データを基にして導き出す腎臓のろ過量です
・尿素窒素(BUN)
:腎臓によって濾過され、排出されるべき老廃物です。やはり血中濃度が高いほど腎機能が落ちている証拠です
血液検査とともに尿検査も重要な項目です。尿検査では以下の数値や内容をチェックしましょう。
 ・尿たんぱく定性検査
:尿中のたんぱく質や潜血を調べます。異常があればプラスと表記されます。ここまでが一般の尿検査です
 ・尿沈渣(にょうちんさ)
:尿から沈殿物質を取り出して調べ、腎臓病の種類を確認します。遠心分離機を活用した、一般尿検査よりも高度な検査です。こちらは通常、健康診断には含まれません

詳細な検査は人間ドックを利用しよう

・詳細な検査に人間ドックが必要な理由
上記にご紹介したように、通常の健康診断には遠心分離機を利用した尿検査など、コストのかかる検査項目は含まれていません。
健康診断のオプションで付けくわえることはできても、健康診断である以上は希望するすべての検査を実施できるとは限らないのです。医師と相談のうえで必要な検査を全て実施できるのは人間ドックだけです。このことから、腎臓病の詳細な検査には人間ドックが必要なのです。

・人間ドックの腎臓病の検査領域
エックス線撮影、CT、MRI、エコーなどの画像診断や尿沈渣は、切らない検査として非常に心強い検査項目です。
ただし、造影検査は明確な腎機能低下が確認されている患者さんには適合しません。エコー、単純画像検査、腎機能検査、腎生検が最終的な診断方法となるでしょう。
いずれにしろ、健康診断の範囲内では腎臓病の兆候を確認するところまでが領分であり、腎臓病の確定を行うには個別の診断が必須なのだと覚えておいてください。

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