高濃度乳房をご存知ですか?

コラム

約20%の死亡率減少効果が示されている乳がん検診のマンモグラフィですが、マンモグラフィの弱点として「高濃度乳房」(「デンスブレスト」とも呼ばれます)が指摘されています。今回はこの「高濃度乳房」がどういったものなか、現在指摘されている課題を含めご紹介します。

高濃度乳房とは

乳房は、乳汁を生成・分泌する乳腺組織と、それを支える脂肪組織によって構成されています。この比率は年齢や体質、出産・授乳の経験、生活習慣などの影響を受け、個人によって異なります。

乳腺組織と脂肪組織の比率・分布状態は、マンモグラフィによって「乳房の構成」として下記の4つに評価・分類されます。

● 脂肪性:ほぼ完全に脂肪組織のみで構成された乳房。マンモグラフィで撮影すると乳房全体が黒く写る。
● 乳腺散在性:脂肪組織で構成された乳房に乳腺が散在した状態。マンモグラフィの画像には、黒く写る部分と白く写る部分が混在するが、基本的には黒い部分が多い。
● 不均一高濃度:乳腺組織に脂肪が混在。マンモグラフィでは不均一な濃度を呈し、乳房全体が白っぽい画像になる。
● 高濃度:乳腺組織が乳房全体をほぼ完全に占め、乳腺実質内に脂肪の混在がほとんどない。マンモグラフィでは乳房全体が真っ白に写る。

4つのうち、「不均一高濃度」と「高濃度」の2つが「高濃度乳房」と総称されます。現時点では、日本人全体について調査したデータはないのですが、閉経前の40代で、高濃度乳房の割合が高いことが明らかになっています。

高濃度乳房で注意すべきこと

● マンモグラフィで異常が発見されにくい:
マンモグラフィでは乳腺が白く写りますが、がんを発見するうえで重要な「しこり」「石灰化」「乳房構築の乱れ」といった異常所見も同様に白く写ります。高濃度乳房では、異常所見が、真っ白に写し出される乳腺と重なり隠れてしまう可能性があります。

● 乳がんリスクが高まる:
関連についてはまだ解明されていませんが、高濃度乳房では乳がんの発生リスクがわずかながら高くなることが指摘されています(およそ1.2倍)。

● 乳房の構成結果は一律には知らされていない:
高濃度乳房は乳房の構成を表す「所見」であって、「病気」や「異常」ではないため、原則として検査や治療の必要はないとの判断のもと、現在全国で一律に乳房の構成を受診者に知らせるというルールにはなっていません。
ですが、「がんが発見されにくい」・「乳がんのリスクが高まる」という事実は本人が知るべき情報として、受診者に伝えることが国際的な流れとなっています。

高濃度乳房に対する追加検査

高濃度乳房の病変を見つけにくいというマンモグラフィの弱点をカバーする検査法として超音波検査があります。超音波検査では、「乳腺」と「しこり」の判別が比較的容易であり、高濃度乳房の影響が少ないとされています。

マンモグラフィと超音波検査にはそれぞれメリット・デメリットがあります。マンモグラフィでは高濃度乳房の病変が発見されにくいとはいえ、早期の乳がんは石灰化によって
発見されることが多く、乳がん検診においてマンモグラフィは有効・不可欠な検査です。

高濃度乳房の割合が高い40代女性において、マンモグラフィと超音波検査を併用することによって、乳がんの発見率が上昇したという日本の研究結果も報告されています。

まとめ

高濃度乳房は、乳がんのリスク因子ではあるものの、「病気」や「異常」ではなく、乳房の構成を示す「所見」です。
過度な不安や心配をいだきすぎることなく、セルフチェックや定期的な検診を継続することが何よりも重要です。
基本的には40歳を超えたら2年に1回、マンモグラフィによる乳がん検診を受け、高濃度乳房が判明した場合には、超音波検査の追加を検討するよう専門家の多くが推奨しています。

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