被爆と脳腫瘍の関係……何十年もかけて体を蝕む放射線の影響

コラム

被爆と脳腫瘍の関係……何十年もかけて体を蝕む放射線の影響第二次世界大戦の際に広島・長崎で原子爆弾の被害に遭った人々が、被爆から60年、70年という長い時間を経て脳腫瘍を発症するケースが多く記録されていると言います。
放射線による人体への影響はいまだに研究の途上です。近年では東日本大震災で膨大な放射線が環境を汚染し、日本人の暮らしを変えました。被爆の可能性は他人事ではありません。万が一被爆したとして、被爆後にどのような病気が起こるのか、それに対してどのような検査を行うべきなのか検証してみましょう。

被爆後に人体はどうなるのか

・放射線に被爆した直後
被爆の早期影響については、広島・長崎の原子爆弾投下後の記録が参考になるはずです。原爆投下から4カ月以内に広島で11万人から14万人が、また、長崎では約7万人がなくなりました。もちろんこの場合には爆弾による熱風などの外傷も影響しているわけですが、大量の放射線被爆によって機能が損傷することは間違いありません。

・長期的な影響は?
被爆による長期的な影響を「晩発影響」と言います。こちらは当然ながら「がん」が代表で、1グレイの被爆で膀胱がん、乳がん、肺がんがいずれも1.5倍以上のリスクを記録しているそうです。広島県医師会によると、被爆が引き起こすと考えられるがんは他に脳腫瘍、口腔がん、甲状腺がん、肺がん、胃がん、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、食道がん、乳がん、肝臓がん、大腸がん、急性骨髄白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病など。
ただし、婦人科の領域で警鐘が鳴らされている子宮頸がんについては被爆との因果関係は認められないそうです。
そして、近年ようやくがん以外の影響も知られるようになりました。白内障、甲状腺機能亢進症、リンパ球の染色体異常など。また、近年被爆者の間で増えている心臓病や血管障害、脳卒中その他の疾患についても、因果関係が懸念されています。

被爆後の検査方法とその選び方

被爆と脳腫瘍の関係……何十年もかけて体を蝕む放射線の影響
・放射線被爆の影響を探る
体内にどれだけの放射線が取り込まれているのか調べる検査が「内部被爆検査」です。血液や尿の放射性同位体測定によって、どの種類の放射線を浴びたのか、また、取り込んでしまったのかが分かります。
何らかの症状が起こる前であればサプリメントの摂取によって対応することになるでしょう。しかし、すでに何らかの病気が発生しているようであれば病変部位の治療方法を決めるための検査が必要です。
東日本大震災以降こうした検査を実施する病院は急増しましたが、いずれにしろ一般健康診断とは異なる領域なので人間ドックの範囲となります。

・被爆関連疾患の検査項目の選び方
被爆関連疾患として病気が起こっている場合、既に放射性物質は体内に取り込まれた後ですから、放射性物質の除去では解決できません。通常の病気と同じように対症療法を行うわけですが、一般的な検査項目の中にはエックス線を用いる画像診断が必ず盛り込まれます。
通常状態でもエックス線画像診断は総合受診回数の限度が定められていますから、被爆後の検査では絶対に避けなければならないのです。
被爆関連疾患のために行う検査項目は「低侵襲なものである」ことが大前提。例えばCT検査ではなくMRI検査、あるいはレントゲン検査よりも超音波検査といったように、個人に合わせて身体に負荷の少ない検査方法をかかりつけ医とよく相談して選ぶようにしてください。

3.11以降、日本の全国民が多少なりとも被爆していると言われています。早期影響が出るほどの被爆量ではないとしても、晩発影響は放射線量が蓄積すれば危険性が増すばかり。 今、ご自分がどれだけ被爆しているのか確認しておきさえすれば、それまでの生活を見直す手がかりになるはずです。ぜひ人間ドックを定期的に受診し、問題点の発見を心がけていただきたいと思います。

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