遺伝性乳がん・遺伝性卵巣がん症候群は同じ「遺伝子」の変異がもたらす

コラム

遺伝性乳がん・遺伝性卵巣がん症候群は同じ「遺伝子」の変異がもたらす国立がんセンターの統計では、日本人は二人に一人という高確率でがんに罹患します。生涯を通してどの臓器がよりハイリスクなのか知るには、やはり統計データを紐解いて多数の患者が確認されているがんの種類をチェックすべきでしょう。
2016年度の予測統計によると全がんの中でリスク順位は過去からの変動がなく、第一位が「乳がん」でした。罹患数では9万人と推定されており、女性の中では当然第一位を独走している状態です。また、男女のリスク順位を機械的に総合した結果でも第五位でした。
乳がんを始めとした女性にハイリスクのがんは、これだけの高確率で日本人の脅威となっているのだと認識する必要があります。

定期的な検査の必要性と女性のがんの原因

・女性のがんの種類と原因は?
女性にハイリスクとされるがんは、主に「乳がん」「卵巣がん」「子宮がん」です。その大半の原因は生活習慣や、女性ホルモン、あるいはヒトパピローマウィルスなどの感染症にあると考えられています。ただし、「乳がん」「卵巣がん」については遺伝性の要因を指摘される患者が一定数いるのですが、これを「遺伝性乳がん」「遺伝性卵巣がん」と呼んで区別します。遺伝性乳がん・卵巣がんの原因となる遺伝子の正体は「BRCA1」あるいは「BRCA2」 遺伝子で、いずれか、あるいは双方に異常があった時に乳がんや卵巣がんが発生するとされています。

・定期的な検査の必要性
がんの発生を予防、あるいは早期発見するには定期的な検査が欠かせません。特に女性は女性ホルモン「エストロゲン」の影響によってがんを発症しやすくなっているのだとか。生理周期に沿って女性ホルモンの値が上下する女性は、常に発病の危険性と隣り合わせに生活しているというわけです。
通常の健康診断では調べられない領域ですから、定期的な人間ドックなどの詳細な検査の必要性は議論するまでもないでしょう。

遺伝性乳がん・遺伝性卵巣がんを予防するには

遺伝性乳がん・遺伝性卵巣がん症候群は同じ「遺伝子」の変異がもたらす

・遺伝性乳がんと卵巣がんの確率
遺伝性乳がんと遺伝性卵巣がんの患者は、1年単位で範囲を区切れば総数約10万人。そのうち乳がん患者は約9万人で、その3%から5%が遺伝性だそうです。卵巣がんについては総数約1万人、そのうち約10%が遺伝性とのこと。女性が高確率で罹患するこれらの病気を予防し、あるいは早期発見するためにはがん検診と遺伝子検査が必須です。これらは一般健康診断や成人病検診のオプションで加えられるケースもありますが、通常は人間ドックの領域に入ります。

・乳がんや卵巣がんを調べる人間ドックの検査項目
・子宮頸部細胞診(検体検査)
・子宮体部細胞診

子宮がんの検査と同時に診断を確定できるのは検体検査ならでは。子宮頸がん、体部がん、それぞれ細胞を採取する場所が変わってくるので、細胞診までにある程度ターゲットを絞る必要があります。 ・内診
医師による触診です。外側の所見に異常がないか調べるとともに、膣の内側の状態を目や手で確認する検査です。
・経腟超音波検査
・腫瘍マーカー
・MRI検査
・マンモグラフィ検査

腹腔内の臓器、子宮や卵巣は体表からの超音波が届きません。そのため、ターゲットを絞った腫瘍マーカーや経腟超音波画像診断で腫瘍の有無を調べます。
・遺伝子検査
「BRCA1」と「BRCA2」遺伝子に変異がないか調べる検査です。

遺伝子に病変がある女性は、そのほかの女性と比較して10倍以上も高くなると言われています。近親者に乳がん・卵巣がんを発症した人物がいる場合は特に危険性を強く認識するべきです。がん細胞は短期間で急激に増殖するケースがあるので、最低でも1年に1回は人間ドックを受診することをおすすめします。また、検査を終えてからの期間には、自己チェックをこまめに行うようにしましょう。

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